見た目を向上させつつコストを抑えるポイント

1. アッセンブリーの方法を吟味する

精密板金において部品を組み立てる(アッセンブリーを行う)方法には、リベット、ボルト・ナット、溶接など様々なものがあります。それぞれ強度など特徴がありますが、外観を重視する場合はこの方法自体を吟味して設計を行うことが必要です。特に溶接は熱によって歪みが発生するので、外観重視の精密板金であればなるべく溶接を採用しない方が、外観とコストを両立できます(溶接後の歪み取りも可能ですが、作業時間の増加とともにコストも上昇します)。
さらに、精密板金のワークの大きさや複雑さにもよりますが、一体化させて設計を行うことで外観向上につながるケースもあります。

2. 溶接する場合は歪みの少ない溶接方法と種類を検討する

上記のように、アッセンブリーを行うにしてもさまざまな方法から検討することが外観品質の向上のためには重要とお伝えしましたが、一方でどうしても溶接を採用しなければならないケースもあります。その場合には、全周溶接ではなく熱影響の少ないタップ溶接を行うなど方法を検討する、あるいは溶接の種類も、より熱影響の少ないものを選択することが必要です。なかでも薄板の精密板金の場合は特に歪みやすいのでアッセンブリーの方法とともに、溶接の方法・種類を設計段階で詰めておくことが求められます。

3. 使用環境によって最適な材質を選択する

一口に精密板金といっても、産業機械から食品機械・医療機器などの用途、あるいは屋内・屋外などの設置場所など、使用条件・環境によって様々な特性が求められます。従って、美しい外観品質を保ちつつコストを抑えるためには、選択する材料を最適化することがポイントになります。

4. 材料の種類と板厚を最適化する

用途・環境のほか、精密板金の外観品質を向上させるために抑えておくべきポイントがあります。それは、加工工程におけるキズの発生です。これは治具などを用いてある程度回避することが可能ですが、その材料が本来持っている特性によって、キズがつきやすい(目立ちやすい)ものもあります。こうした素材がどのようなものか、あるいはキズを回避するために行われている材料レベルでの対策がどのようなものかを知った上で設計を行うことで、キズのない精密板金を手に入れることができます。

5. 最適な表面処理方法を選択する

ステンレスを使った精密板金では、外観品質向上のためにバフ仕上げが指定されることがあります。しかし、バフ仕上げを行うと、ムラや歪みが発生してしまうので、これに代えて磨き材や電解研磨処理を行う方法もあります。このように、どのような用途で使われるのか、どのレベルでの品質が求められるのかを明らかにした上で、最適な表面処理方法を選択することが外観品質向上の近道になります。

このように、外観品質を向上させる方法・考え方にはさまざまな視点がありますが、これらの条件すべてを設計者が把握したうえで製品に反映させることは至難の業です。したがって、コストを抑えつつ見た目の品質を向上させたい場合は、こうした対策に長けている精密板金のプロに相談するのが手っ取り早い方法といえます。

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